1椀の中に、季節の野菜と鴨肉、きのこやお麩がたっぷり入ったじぶ煮。1椀の中に、季節の野菜と鴨肉、
きのこやお麩がたっぷり入ったじぶ煮。

−「じぶ煮」は石川県に伝わるおもてなし料理だそうですね。

青木さん:もともと、加賀藩の武家に伝わる"ハレの日の料理"で、文献によると1600年以降、作られている由緒ある郷土料理です。鴨肉、椎茸、加賀地方特産の"すだれ麩(ふ)"を基本に、季節の野菜を彩りよく取り合わせ、だし汁、醤油とみりん、砂糖で煮上げたシンプルな料理ですが、石川県のお祝いの食卓には欠かせない料理なんですよ。当時は食肉文化がほとんどなかったため、鴨肉を贅沢に使った「じぶ煮」は特別な料理として、歴代の藩主に愛されてきたそうです。

−肉は、鴨を使うのですね。

青木さん:石川県には、国内でも有数の鴨の飛来地があります。江戸時代、鴨猟が盛んだったこともあり、郷土料理のなかではご馳走として鴨肉が使われていました。「じぶ煮」は、スライスした鴨肉を使いますが、鴨猟がさかんだったころは骨ごと細かくたたいてお団子にしたり、串焼き、鍋物など、さまざまな鴨料理が楽しまれていました。

−料理の名前もユニークで、印象に残ります。

青木さん:「じぶ煮」の名前のルーツは諸説あります。まずは豊臣秀吉の朝鮮出兵に従軍した兵糧奉行、岡部治右衛門にちなんでいるという説。また、「じぶ煮」を煮る時に、"じぶじぶ"と弾けるような音がすることからそう呼ばれた、というなんとも温かみのある説もあり、私はどのエピソードも大切に伝えています。

江戸時代から伝わる郷土料理を愛し、大切に守る青木さん。
「じぶ煮」の作り方にも、当時の味をそのまま伝えるためのこだわりがあるそうです。